卒業論文の書き方(フランス文学)

昨日カミュのことについて書いたり、先日全国通信三田会の会報が届いたり、去年の3/10付けで卒業したんだな、とか思い出したりしたらいろいろ懐かしくなったのと、今は時間があるので、卒業論文の書き方について書いておきたいと思います。

ワタクシは、慶應義塾大学文学部フランス文学専攻(通信教育課程)でしたが、他の学部や大学の方にも、手順や形式等は参考になるのではないかと思われます。

ーテーマ選びー

何と言ってもやはり、テーマ選びが大切だと思います!…と言いながら、ワタクシはとある舞台を見に行って、これだ!!!という閃きを得たので、テーマ探しには全く苦労しませんでしたけど(笑)、いずれにせよ、いい題材がないかと日頃からアンテナを張っておくことは重要です☆

そのときにポイントになることは、

他の人がまだ研究していないテーマを選ぶこと。

この一言に尽きると思います。ただ、先行研究が全くないと、それはそれで研究が行き詰まるので、ある程度世間的に評価がある作家、もしくは作品、ですが、あまり研究されていないもの、ですね。いいテーマに出逢えるかどうか自体、それまでいかに勉強してきたかが問われることになると思うので、テーマ選びは慎重に。

というのも、文学部では、卒業論文登録をしても、4割くらいの人が予備指導に回されて、テーマ変更を求められるのですと(驚愕)!!!

ワタクシの場合は、ホントは卒論以外の単位を全部取ってから卒論に取りかかろうと思っていたのですが、在籍期限が迫ってきていたことと、もういい加減卒業したい!と思い立ったこともあって、7月くらいに卒論について調べていたら、卒業論文登録の締め切りまであと1ヶ月もない!という状況だったんですね。でも、それを逃すと、卒業が確実に半年は延びるわけで、もう我慢できない!と思って、必死になって文献を調べ、慌てて論文構想を書きました。

テーマは決めていたものの、実際にそれが研究に耐えうるのかどうか、全く手探りのところから始めました。しかし届いたのは「本指導」の通知!いいテーマと出逢えたことは、まさに天からの授かり物みたいなものです☆

ー卒業論文を書く準備ー

そして10月に、第1回卒業論文指導がありました。そもそもワタクシは、論文というのを書いたことがなかったので、右も左も分からない状態… 短大卒ですが、そのときはレポートをぺらっと書いただけ、ということで、とにかくドキドキ。

指導教官は、予想通り、でした。テーマは、アルベール・カミュの『カリギュラ』でしたが、慶應にはカミュがご専門の先生がいらっしゃらないんですよね。それで、指導教官の希望は書かなかったのですが、20世紀の作家研究をされている先生となると、ある程度絞られてくるわけで… そういう意味で、予想通り、でした。スクーリングのときにファンになった先生だったので、嬉しかったです☆

そんな先生からは、挨拶をするなり、「カミュが専門ではないのですが、私でよろしいですか?」と何とももったいないお言葉をいただき、恐縮しきり。「一緒に勉強していきましょうね」と優しくおっしゃってくださり、慶應の伝統「半学半教」とはまさにこのこと!と感動したわけですが☆ すぐさま厳しい現実を突きつけられました。

まずは、卒業時期の確認。慶應の通信では、半年に一度の卒業論文指導を最低3回受けないと卒業できない、と決められているのですが、「普通は3年かかりますよ!ホントに3回で卒業したいんですか?」と何度も確認されました… 例えば中国文学等では、最低4回とか書いてあった気がします。それでも、卒論以外の単位があと5単位くらいだったので、何とかそれでお願いすることに。

そして、卒論の方向性についての話。テーマ自体は面白い!とのことだったので、どこに論点を置くかについて、いくつかの例を示してくださり、その中でワタクシが気に入ったものを使わせていただくことに。具体的な構成としては、

まず序論で、テーマとの出逢い、作家、作品の紹介をすること。そして第1章、第2章… と、論述し、最後に結論を書くこと。最低2万字!

そして次回までに、テキストを原文で読み、キーワードが出てくる箇所をまとめた「引用集」を作ってくること、少なくとも序論は書いてくること、という2つの課題を出されました。

いやはや、先生から「フランス語はできますか?」と聞かれ、「仏検は3級です(当時)」と答えたら、「じゃあ『カリギュラ』と『異邦人』を原文を読んできてくださいね」とサクッと言われ、真っ青に。。。「『ペスト』じゃなくてよかったですね~(笑)」と言われたけど、笑えない、それ~みたいな(汗)。

その後、原書も購入しましたが… 『カリギュラ』の原書がなかなかなくて、イギリスのamazonでポチッとした気が、結局はネット上にテキストがあったので(笑)、ルーズリーフに印刷して、コツコツと訳しました。ちょうど、誕生日に『カリギュラ』の訳が終わって、いい誕生日☆ みたいな。の反面、『異邦人』は前半しか訳が間に合いませんでした(汗)。この苦労した自作訳本、捨てられませんね☆

ー論文は体裁命!ー

そして5月の、第2回卒業論文指導。指導は、一週間前に論文を先生にメールで送り、当日はそれについてアドバイスをいただく、というパターンです。とりあえず序論は書いたものの、本論はまったくと言っていいほど書けておらず、冷や汗(汗)。というかそれ以前に、どんな書式で書いていいのか分からず、先生がお持ちになっていた卒業生のサンプルを見せていただきました… そうなる前に、通信教育部の事務局で、先輩方の卒論を見ておくことを強くオススメします☆

書式は自由… ワタクシは、40字×30行で書いた模様。片面印刷。左端を綴じるので、左側の余白は多めに。引用は一段下げる。脚注(引用箇所の原文&参考文献)とページ番号を入れる。

が基本ですね。他に、表紙と、目次のページをつけます。…もうホントに、本を書くイメージです!レポートのときは、先生が読者ですから、初歩的なことは省いたりしますが、卒業論文はワタクシたちが参考文献として使う本だと思って書くといいと思います。そのときに、

内容もさることながら、見た目の印象を大事にしよう!

例えば、各章の節の数や分量は同じにする、とか、各ページの文字数を大体同じにするとか… 改行等でたまたま余白が多くなったとしても、それだけであまり考えてなさそうと思われるので気をつけるように、など言われました。その後も、指導のたびに、内容のことよりも書式のことで意見をいただくことが多かったです(汗)。

また、予備知識は脚注に詰め込む!勉強が進むと、あれもこれも書きたい!という感じになりますが、本論とあまり関係ないことは、全部脚注に回しましょう。脚注が充実していると、知識が豊富だということをアピールできる、と☆

あと、タイトルも決めましたね。これまた、よくあるパターンのタイトルをいくつか挙げていただき、「それにします!」と選びました(笑)。もう、卒論の相場というのがいろいろ分からなくて、ホント、先生様々です☆

肝心の内容に関しては、各章の論理展開が同じになるように工夫しました。ワタクシは3章仕立てで書いたのですが、それぞれのキーワードについて、第1節では『異邦人』の分析、第2節では『カリギュラ』の分析、第3節では一歩推し進めたまとめ的な感じ、という展開にしました… とはいえ、どの節も同じ分量にするのに相当苦労しましたよ(汗)。

ちなみに、ホントに進行具合が遅かったので、8月のスクーリングのときにも特別に指導していただきました… だって、10月には、もうほぼ完成している状態でないといけませんからね(汗)。文章を書かないことにはアドバイスをいただけないわけですから、指導のたびに「とにかく書いてください!」と言われました… ご迷惑をおかけして申し訳ありません。。。

その後、10月の指導前にメールでお送りしたときに、すさまじいダメ出しメールが返ってまいりまして、根本から立て直す大工事に取りかかりました(汗)。そしたら指導のときには、「よくなりましたね!」と誉めていただき、11月末に提出するかどうかは、ワタクシの手に委ねられました。提出を遅らせれば、ちょうど誕生日に卒業式!で、それもいいかと思ったのですが(笑)、折角なら学内(日吉記念館)で卒業式がいいな~と思ったのと(今年はパシフィコ横浜)、猛烈に書いていている勢いのまま提出したほうがいいと思ったので、提出許可のハンコをいただきました。

ー卒業論文提出ー

そんなこんなで、ギリギリ進行だったため、製本業者に頼むことは、端から考えていませんでした。よって、製本キットをネットで2部購入し… 一応予備、というか、記念に手元に残しておこうと思って、一旦製本したのですが、誤字を見つけてまた綴じ直して、というのが2回くらいあって(汗)、何とか完成… 誤字脱字のチェックは念入りにしましょう。

そのときにも、やっぱり印刷してみないとバランス等は見辛い、でも、枚数が多いので印刷するだけでも結構時間がかかる(汗)、ということで、2段組(用紙節約印刷)にして、実際に赤ペンで直して、パソコンで修正という流れにしていました。パソコンの画面だけでは分からないことが多いですね(汗)。その反面、スペルチェック等、機械に任せられるところは任せたほうがいいです。ただ、最終チェックは自分の目でしないといけませんけどね。

ちなみに、写真を貼って提出するのですが、11月の半ば頃、左目から出血して白目が紅に染まりまして、あら大変みたいな(超グロテスク)!出血するくらい頑張ったよー!という記念を残すのもいいかと思ったのですが(笑)、やっぱり恥ずかしいので、治るのを待つことに… 締め切りが迫ってきて焦る焦る(汗)。

そして締め切り2日前に要約を書いて… これが素晴らしくまとまったので、本編も書き直したくなりましたが(汗)、最小限にとどめて、11月30日の締め切り当日、大事に大事に郵便局へ持っていきました。

ま、ワタクシ的には、製本キットで十分だったと思います。職場の人たち(国立大卒が多い)に見せたところ、ここまで本格的な卒論は書かなかったと、みんなに驚かれたので。結局脚注を除いて3万5千字、50ページになり、50枚収納タイプを使いました。例えばこんな感じの→レイメイ藤井 製本カバー 製本工房 A4 50枚収納 ブラック KS50A4B

ー卒業論文の評価ポイントー

先日書いたように、卒業試験(口頭諮問)の際に、卒論についての講評をいただきました。その中でも評価してくださったポイントを紹介しますので、これから書かれるみなさんの参考になると幸いです☆

難解な作品を読み解いた… 日本ではあまり有名でない作品を扱ったのがよかった。←作品との出逢いに感謝☆

原典を分析している… これだけのフランス語が読めれば、学部の論文としてはそれだけで十分!←「読んできてくださいね~」と当たり前のように言われた、あれは何だったんだ(笑)。

構成が分かりやすい… 『異邦人』と比較してから、『カリギュラ』を分析するという構成が分かりやすくてよい。←苦労した甲斐がありました☆

幅広い観点から分析している… 文学の範囲にとどまらず、天文学や哲学などの参考文献も使っているところがよい←非常によく勉強されていますね!と誉めていただきました(照)。

残念だった箇所も指摘していただきましたが、どれも心当たりがあることばかりでした… もう少し時間があれば、解決できたはず(汗)。ともあれ、先生には多大なるご迷惑をおかけしたので、喜んでいただけるような論文に仕上がってよかったです☆

ー感想ー

一度きちんとした論文を書いたので、次からは大丈夫そうです(笑)。それとともに、先生の指導方法には感心しましたね。ワタクシも、一応教師と名のつく者の端くれとして、迷子になっているところに的確な指示をくださる先生の手腕には、見習うところが多く、感化されっぱなしでした。もっときちんと書いていけば、更なるアドバイスをいただけたかもしれないわけで、もったいないことをしたとも思うのですが、ワタクシ的にはあのときの最善を尽くすことができたので、満足です☆

それとともに、やっぱり何はなくとも、テーマ選びが重要ですね!ワタクシはたまたま、フランス文学に興味を持つきっかけになった作品と、在学中に出逢った作品に関連があることが分かり、卒論という形ですべての謎を解き明かせたことで、気持ちよく卒業することができました。ホントに、これまで学んできたことがあれもこれもつながって、まさに卒論を書くために勉強してきたんだ!という感じがして、達成感が半端なかったですね(感動)☆ 辛くて大変だったけど、あれもこれもいい思い出です… ホントに辛かったけど、出せないかも、なんてことは不思議と一度も思いませんでした。

ということで、長々と書いてきましたが、お役に立てましたでしょうか?みなさんも素晴らしい論文を提出し、胸を張って卒業してくださいね~☆

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください