推し活にまつわる著作権について

推しのことを、もっともっと多くの方に知ってもらいたいですよね!でも、よかれと思ってしたことが、実は推しに迷惑をかけていることも…。

ということで今回は、なんとなくは知っているつもりでも、細かいことまではわからない、もしくは、難しそうで端から理解不能(汗)、という方のために、できるだけわかりやすく、具体的な事例も含めて紹介してみたいと思います。

-そもそも著作権とは-

著作権法の目的は、「著作者の権利の保護を図ることによって、文化の発展に寄与すること」です。

例えば、ある作家が書いた小説の海賊版が大量に出回り、そちらのほうの売上が良かったとしたら、折角小説を書いた作家本人に収入が入らないことになりますよね。そこで、創作者に無断にコピーしてはいけないという権利である「著作権」が、生まれたわけです。

ただし、創作物であれば何でも著作権が発生するわけではありません。著作権法では「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています。また、届出等は特に必要なく、著作物を創作すれば、自動的に発生します。

よって、このブログの記事には、著作権が発生しております。その一方、実用品、大量生産される工業製品などには、著作権は発生しません(意匠権などの別の権利で保護をします)。

また著作権が効力を持つのは、著作者が個人の場合は、著作権が発生したときから著作者の死後70年、法人等の場合には、著作物が公表されてから70年となっています。

という著作権ですが、まとめると「著作者の利益を保護するための権利」といったところでしょうか。厳密に言うと、複製権、上映権・演奏権、上映権、公衆送信権等… と、いろいろある細かい権利の総称ということになるのですが、とりあえず著作物を使用するときのポイントをまとめます。

 

-著作物を利用するときのポイント-

著作権、と言葉を聞いただけで、あれもいけない、これもいけない、という気がして敬遠しがちになってしまいますが、正しく利用すれば何の問題もありません。

そのときのポイントを4つ紹介します。

 

1. 著作者の許可を取る

これは文字通りです。許可が得られれば、何の問題もありません。

例えば、「YouTube Liveの映像をスクショして、SNSに上げて拡散してくださいね~」などの許可が本人(著作者)から得られれば、その許可の範囲内で利用する分にはまったく問題ありません

…ただしその場合でも、例えば、スクショに失敗して、うまく撮れなかった画像などを拡散してしまうと、本人に不利益が生じて、最悪削除する旨を申し立てられる場合もあるかもしれませんので、気をつけましょう。

 

2.個人的に利用する

本人だけ、家族内でだけ、など、私的利用が目的であれば、一部の例外(詳細は後で)を除き問題ありません。(知らない人が1人でもいたら、アウトです)

例えば、テレビ番組を録画して後で見たり、購入した本を裁断してスキャンし、パソコンに取り込んだりする行為(いわゆる自炊)は、個人的に利用する分には問題ありません。(ただし、自炊を業者に依頼するとアウトです…他炊(笑)?)

 

3. 改変しない

著作物には、同一性保持権(著作物を勝手に改変されない権利)があります。よって、例えば他人の写真を許可なく加工すること、あるキャラクターをもっとかわいくアレンジすること、などは許されていません。

ただ例外として、学校教育の目的上、やむを得ないと認められる改変(例えば、文章中の漢字をカナ表記して、テスト問題を作成する)、建築物の増改築等、コンピュータプログラムのアップデートなどは、同一性保持権の侵害にはなりません。

 

4.引用する

「無断転載禁止」と書かれたものでも、引用の範囲でなら利用することができます

引用とは、例えば、大学のレポートなどで、自分の主張を後押しするために、他者の論文の一部を使用することや、ある作家の小説の感想をブログに書くために、小説の該当箇所を提示すること、などがあたります。

この場合、「」をつける、行を変える、などして、引用箇所であることを明確にすること、出典を明らかにすること、自分の意見の部分(主)>引用部分(従)の関係ができていること、引用部分を改変していないこと、などが守られていれば、著作物を使用することができます。

逆に、以上の事柄が守られていない場合、「転載」とみなされます。例えば、少し前に流行ったまとめサイトは、他者のツイート等の記事を載せるだけで、作成者の意見や思想等がない(つまり主<従)であるため、問題があり消えていったというわけです。

-これって著作権侵害!?-

それでは、実際にSNS等で起こりえそうなケースを、取り上げてみることにします。みなさんも、合法なのか、違法なのか、考えてみてくださいね。

 

Q1. テレビに推しが出てる!スクショしてツイートしよう!

A. これはNGです。

テレビ番組の著作権は、テレビ局にあります。よって、テレビ局の許可無くスクショをアップすると、複製権公衆送信権、映っている人物の肖像権、その人が有名人であればパブリシティ権に抵触することになります。

例えば、NHKのサイトには、テレビを録画して家族で見る、学校の先生が録画して授業で流す、ことは問題ないが、「利用者がテレビやラジオの番組の画面や音声を取り込んでインターネットに利用することについては、番組に関係するさまざまの権利者の理解を得られる状況にないこと、肖像権等の問題があることなどの事情から、お断りしています」とあります。

ブログ等でその番組について分析or解説する際に、その場面の画像がどうしても必要だということであれば、引用の範囲に収めることもできるでしょうが、ツイートの場合はツイートの文面(主)よりも、画像(従)の比率のほうが大きくなる(そもそも画像を見てもらうのが目的ですね)になるので、引用には当たりません

つまり、個人的に使用するだけなら問題ないのですが、それを不特定多数が見られる状態にする=アップロードすると、その時点でアウトになります。

 

Q2. 推しが掲載されている雑誌を買いました!表紙の写真を撮ってツイートしよう☆

A.基本NGです。

表紙はすでに公表されているものだし、宣伝になっていいかなぁ~?と思ってしまいがちですが、本の表紙も著作物の一部なので、公開目的での撮影は複製権の侵害に、その写真をWeb上で公開すると、公衆送信権の侵害に当たります。表紙だけでもNGですからね、中身なんてもってのほかです!

これも、Q1同様、買いました!なだけでは、画像がメインとなり引用には当たらないのでアウトなようです。…ただイチイチクレームを入れていては大変なので、出版社は見逃しているというのが現状なんでしょうね。

しかし、ブログなどに本の表紙やアルバムのジャケットを掲載したい場合は、画像つきのアフィリエイトを使うという手があります。これだと、撮影してないので、問題ないようです。

また同様に、ウェブサイトやアプリのスクショ利用もまた、単に載せるだけでは著作権侵害に当たる可能性があります。どうしても画像を載せなければならない場合は、出典を明記し、あくまでも引用の範囲に留めるようにしましょう。

 

Q3. インスタの投稿をスクショして、ツイートしよう!

A. これもNGです。

インスタの投稿から「シェア」をしても、ツイートにはサムネが表示されないためか、このテのツイートをちらほら見かけますが、インスタ内でシェアする場合には「リポスト」専用アプリを使う、ウェブサイトに使う場合には「埋め込み」機能を使うなど、著作者を明らかにすること、そしてあくまでも「引用」していることをはっきり示すことが重要です。Twitterにはリンクを貼るだけにとどめましょう

また、許可なく画像を加工して公開こともNGです。著作物を勝手に改変すると、同一性が保持されなくなるので、たとえトリミングだけだったとしても、それが著作者の意向に反していればNGです。

もちろん、逆のパターンもNGですよ。Twitterでは画像の保存が簡単ですが、一旦自分のデバイスに保存したあと、自分の投稿として流してしまうとNGなのでお気をつけください。

 

Q4. 推しが通りでライブor撮影をしてる!スマホで動画を撮影してSNSにあげちゃおう!

A. 撮影、アップロードの2点について、許可があればOKです。

Q1のところでも少し書きましたが、撮影される相手には、みだりに撮影されない権利、撮影されたものを公表をコントロールできる権利の2つの権利の総称、肖像権が発生します。さらに、相手が著名人である場合には、経済的利益や価値をコントロールできるパブリシティ権が発生します

例えば、推し自身もその模様を撮影していて、あとでYouTube等に上げる予定だった場合、その模様が別の場所でも見られる状態になっていると、動画の価値が下がってしまいますよね。また、それが映画やドラマの撮影だったとすると、もっと他の問題も絡んできそうです(汗)。

ちなみに、路上で演奏または歌唱したものをYouTube、ニコニコ動画、TikTokにアップロードする場合JASRACが管理している楽曲であれば、各社が使用料を払っているので問題ないのですが、そうでない場合は著作権者からの許可が必要です。また営利目的(聴衆から投げ銭をもらう場合も含む)だと使用料を払う必要があるので、お気をつけください。

なお、Twitter社は、JASRACと契約を結んでいないので、JASRAC管理楽曲を投稿すると著作権法違反になります。

また似たケースでいくと、ネット上に上がっている写真を利用したい場合は、撮影者(著作権者)と、写っている人(全員)の許可を取る必要があります。

 

Q5. 推しの似顔絵を描いたので見てください!めっちゃ似てるでしょ☆

A. 似すぎていると問題となる場合があります。

これは、ちょっと意外かもしれません。デフォルメするなど、本人と似ていない場合は問題ないのですが、写真のように本人そっくりに描いてしまうと、肖像権の侵害に、また芸能人や有名人の場合、パブリシティ権に抵触する場合があります。同様に、アニメキャラ等のコスプレも、似すぎているとNGになる場合があります。

…だから、テレビ等に出てくる有名人の似顔絵って、似てないんですね(笑)。

 

Q6. 推しが出演したラジオ番組を聴けなかった人のために、トークを文字起こししましたよ!

A. これもNGです。

音声と文字とでは違うから大丈夫だろう、と思ってしまうかもしれませんが、番組等での発言は「言語の著作物」に当たるので、引用の範囲を超えるとアウトです。

しかし、発言そのものではなく、表現方法を変えて内容をまとめると、まとめた人の方に著作権が発生します。

…Q5のイラストの件と似ていますね。同じになってしまうと「複製」と捉えられ、NGなパターンです。その番組を聞いた感想の部分が多ければ引用にあたると思いますが、番組自体の紹介だと、そちらがメインなのでNGというわけです。

 

Q7. 有料配信のアーカイブが終わってしまう。。。私的利用だから録画してもいいかな?

A. NGです。刑事罰の対象となります。

私的使用であっても、有償コンテンツ(有料配信、Blu-rayディスクなど)をダウンロードしてしまうとNGです。ただ、デジタル録画・録音に限定されていること、また軽微なものは該当しないとのことなので、数枚のスクショくらいなら見逃してもらえそうです。

また、アクセスコントロール(コピーガードなど)がついている著作物は、それを解除した時点でアウトになります。たとえば、有料放送を、契約者以外が視聴したり、コピーガードがついたディスクのガードを外して保存したりすることがこれにあたります。

 

Q8. まだ見ていない映画が違法アップロードされてる!見てもいいのかな?

A. 見るだけなら問題ありませんが、ダウンロードするとNGです。

この場合、著作権を侵害しているのは、違法アップロードしている人になります。

ただ、たとえ私的利用が目的であっても、違法と知りながらダウンロードすると著作権の侵害にあたります。ちなみに、ストリーミング再生の場合はセーフです。なぜなら、ストリーミングの場合は、一時的にダウンロードしてはいますが、アプリを終了すると、そのデータが消えるからです。

 

Q9. クリエイティブ・コモンズのマークが付いてるから、自由に使ってもいいんだよね?

A. 許可が許されている範囲内で利用しましょう。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)とは、著作者が「この条件を守れば自由に使ってくれて構いませんよ」という意思表示をするためのツールで、世界50を超える国や地域で利用されています。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスには、利用条件の組み合わせにより、6種類があります。

1.表示(BY)… 作品のクレジットを表示し、改変した場合には、その事実を示さなければなりません。

2.表示-継承(BY-SA)… 作品のクレジットを表示し、改変した場合は、元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開する必要があります。

3.表示-改変禁止(BY-ND)… 作品のクレジットを表示し、かつ、改変をしてはいけません。

4.表示-非営利(BY-NC)… 作品のクレジットを表示し、かつ、非営利目的であれば改変や再配布ができます。

5.表示-非営利-継承(BY-NC-SA)… クレジットを表示し、かつ、非営利目的であれば改変や再配布できますが、改変した場合は元の作品と同じCCライセンスで公開する必要があります。

6.表示-非営利-改変禁止(BY-NC-ND)… 作品のクレジットを表示し、かつ、非営利目的であれば改変や再配布ができますが、元の作品の改変はできません。

例えば、YouTube上にも、CCライセンスマークが付いた動画がありますが、大前提として、著作者の意に反しない利用の仕方をしなければならないことをお忘れなく。実際、著作者からの申し立てにより、動画を削除、その上アカウントを凍結された、という例もあるようなので、お気をつけください。

 

Q10. 私が住んでいる国では著作権の扱いが緩やかなので、外国の著作物を勝手に使っても問題ないかな?

A. 諸学説がありますが、その著作物が発表された国での規定が適用されることが多いです。

国によって、著作権が及ぶ範囲、また罰則は違います。…ちなみに、日本の罰則は外国に比べてかなり厳しくなっています。インターネットによりグローバル化した現代では、外国の著作物に触れることが簡単ですが、合わせて、その国の著作権法についても調べておくと安全です。

ちなみに、文化庁のサイトには、「海外における著作権の保護について」と題して、アジアやヨーロッパの諸国に事情について紹介されています。

 

-著作権侵害によって科せられる刑事罰について-

細かい規定がいろいろあるのですが、とりあえず今は、上記ケースに適用されるものを紹介するだけにとどめておきます。

・著作権・出版権・著作隣接権の侵害をすると、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(両方を合わせて科すことも可能)

・個人利用目的でも、販売又は有料配信されている音楽や映像を、著作権侵害にあたることを知りながらダウンロード等を行うと、2年以下の懲役または200万円以下の罰金(両方を合わせて科すことも可能)

著作権侵害行為に対しては、原則的に被害者からの告訴がなければ、起訴されたり刑事罰を科せられたりすることはないのですが、2018年の法改正で違法ダウンロードへの取締りが厳しくなり、例えば有償著作物を複製すると、告訴されなくても刑事罰に科せられることになったので、お気をつけください。

 

-まとめ-

著作物を利用するときのポイントをまとめてみると、

1. 他人の著作物を利用する場合、著作権者の許可を取れば、その範囲内で利用することは可能

2. 出典を明らかにし、改変せず、最小限の範囲で引用する場合、埋め込み機能を使う場合であれば、著作権者の許可は不要

3. 著作権者に不利益が生じる場合はNG

4. あくまでも個人的な利用、または軽微なものについては、問題ない

ということになると思います。

ただ実際問題として、著作権侵害にあたるケースは巷に溢れているので、著作権者がイチイチ著作権侵害の申し立てをしていては本来の業務に支障をきたすでしょうし、無名のクリエーターにとっては、拡散されることで注目度が高まることがあったりして、見て見ぬフリをしている部分が多いのではないかと思います。

もし上記のことを知らずに著作物を無断使用をした場合は、セーフということになっていますが、ここまで読まれたみなさんは、著作権についてちょっと詳しくなられたはずなので、以後気をつけながら押し活をすることにいたしましょうね(ワタクシ自身も含む)!…ファンの評価が、アーティスト自身の評価へと繋がりますよ☆

*法律はどんどん改正されるので、最新のものと照合するようにしてください。

 

-参考文献-

中川勝吾『プライベートからビジネスまで60分でわかる!図説著作権』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年

加藤晋介監修『改正著作権法がよくわかる本』成美堂出版、2017年

デイリー法学選書編修委員会編『ネット時代の基礎知識!著作権法のしくみ』三省堂、2019年

大串肇、北村崇、木村剛大、古賀海人、齋木弘樹、角田綾佳、染谷昌利著『著作権トラブル解決のバイブル! クリエーターのための権利の本』ボーンデジタル、2018年

飯野たから『撮ってはいけない』自由国民社、2017年

菊間千乃『いまはそれアウトです!社会人のための身近なコンプライアンス入門』アスコム、2020年

「ジュリスト9月号/1549号」有斐閣、2020年

以下、Amazonのアフィリエイトを使って本の表紙画像を載せてみた、の例です。

      

 

 

-おまけ-

ワタクシは、2020年秋に、慶應義塾大学法学部(法律学専攻)の学生になりました(通信教育課程)。しかし、入学後まだ半年しか経っておらず、直接的に著作権法について学んだわけではありません。また今回はできるだけ一般の方にもわかりやすく書くことを優先したために、省略した箇所も多々あり、書き方がマズイ箇所があるかもしれません(汗)。…よって、問題点があれば優しく教えてくださいね。

ちなみに、法学部を選んだのは、推し活をしている際に、これは合法なのか?違法なのか?と疑問を持たずにはいられない場面によく出くわすことと、著作権は著作者の利益を保護するためのものであると言いながら、現代社会においては、保護しすぎないほうが利益を生む場合もあるように見えるということが気になり、きちんと学びたいと思ったからです。

例えば、ゴールデンボンバーさんは、独自のガイドラインを発表されています。それによると「アーティスト(事務所)の仕事を邪魔する(収入が減る)かどうか、アーティスト(事務所)が不快になるか、傷付かないかどうか」が判断基準となっているようで、世間的に見るとかなり寛容です(物凄く具体的で分かりやすいので、一度ご覧になることをおすすめします☆)。

…話を戻しますが、入学に際しては、小論文の提出が課せられているので、著作権に関する本を数冊読み、自分なりに分析し提出しました。そしてその結果、合格して今に至る、というわけです。今のところ、卒論では著作権法について取り上げたいと思っていますが、まだ法律の「ほ」の字もよくわかっていないので、どうなるか分かりません(笑)。

それでも今回、書くならちゃんと書こう!と大学のレポート並みにきちんと資料を取り寄せて読んだことは、非常に参考になりました。というわけで、こういうケースはどうなのか?というご質問があれば、お気軽にどうぞ。一緒に勉強していきましょう☆

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