『白鯨との闘い』の感想の前置きとして、今回はアメリカ文学史のことをさらっておきましょう~。
ワタクシは、2008年の巽先生の夏のスクーリングを、インターネットで配信したもので受講しました。ちなみにそれが、慶應通信初めてのE-スクーリングだったんですね。だから、レポートの締め切りがいつなのか、とかが開講後にしか知らされなかったりして、ワタワタしながらまとめて見て、必死でレポート提出!でもそしたら、次の日に先生から直々に講評をいただいて、それ以来すっかり巽先生のファンになってしまいました~☆ 先生、仕事が早いっ(感激)!
アメリカ文学史は、17世紀の、ピューリタニズム(Puritanism)から始まります。巡礼の父祖たち(Pilgrim Fathers)と呼ばれる、ピューリタンの人がヨーロッパから渡って来て、アメリカとしての歴史が始まるので、自ずとその文学も、宗教性を帯びています。
例えば、キリスト教に回心するまでの経緯(Conversion Narrative)や、インディアンに捕囚されたけれど、信仰心があったので帰ってくることが出来たという経験(Indian Captivity Narrative)を語ったりして、物語ができあがります。そしてその物語を流布することで、信仰心をより根付かせようとします。また、アメリカには神話がないので、聖書の物語をなぞらえて、自分たちの行動を正当化したりしたようです。例えば、ヨーロッパを追われて新大陸に渡ってきたことを、出エジプト記になぞらえるとか。
しかし、1692年マサチューセッツ州のセイラムで、いわゆる魔女狩りが起きて、宗教で人を押さえ込むには限界があることが露呈します。もとは、黒人女性が子どもを楽しませるために、ブードゥー教の降霊術めいたことをしていただけなのですが、それが異端だ!ということになり、結果的に150名以上が魔女として告発され、19人もが処刑される事態に発展します。
キリスト教は、信者以外は異端とみなし、排除しようとします。その考え方は、赤狩り、エイズ患者や同性愛者を排除しようとするなど、今も受け継がれています。日本人は、外国からの影響を取り込むのが上手だというのとは対照的ですね… ま、日本は島国だから、外からの影響を拒むという選択権があるという事情の違いもあると思いますが。
ということで、18世紀になると、啓蒙主義思想が起こったこともあり、信仰心が喪失します。例えば、アメリカの100ドル紙幣に描かれている、ベンジャミン・フランクリンは、雷の正体が電気であることを発見します。こうして、世の中の現象が科学で説明できるようになってくると、神が必要なくなっていったんですね。よって、トマス・ジェファソンは、聖書から、神がかり的な要素を排除したものを出版したりしています。
ベンジャミン・フランクリンという人はかなり面白い人なので、それはまた別の機会に書きますけど、アメリカ建国の父祖たち(Founding Fathers)の一人として、アメリカ独立にも携わった人です。よってこの時代には、文学的にも、束縛から解放されて、独立を目指すという内容のものが多く見受けられます(Republicanism)。そもそも、ジェファソンが原案を書いた、「アメリカ独立宣言」自体も、文学として面白いですよ。それもまた別の機会に。
そして19世紀になると、独立して、東海岸から徐々に西海岸のほうへ領土を拡大していく、という物理的な変化とともに、精神的にも、枠組みを超えるようなものが見られるようになります。いわゆる、膨張主義(Expansionism)、超越主義(Transcendentalism)と訳されるムーブメントです。
例えば、エドガー・アラン・ポーは、『モルグ街の殺人(The Murders in the Rue Morgue)』という世界最初の推理小説を書きます。いわゆる、密室殺人です!しかも、犯人はオラウータン(衝撃)!
ポーについてもレポートを書いたので、その話もまた別の機会に。
そして、やっときました、この時代の代表作の一つとして、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』があるんですね。モービー・ディックを執拗に追いかけていくエイハブ船長の姿は、西へ、西へと領土を求めていく姿と重なるところがあります。しかし、結局エイハブ船長は闘いに敗れ、命を落としてしまいます。そのことは、トランセンデンタリズムにも限界があることを示しています。
ということで、押さえ込まれていた人たちが、自ら立ち上がり、どんどん成長&拡大していくというアメリカ文学の変遷は、いかがでしたか?かなり分かりやすいですよね☆ とはいえ、スクーリングの資料はほとんど英語だったので、DLしながらおののいていましたが、いやはや、慣れるもんですね(笑)。それと、動画を見ながら、何度かパソコンが固まったので、イライラして新しいパソコンを買っちゃったのもこのEスクのときでした(笑)。ということで、次回は、メルヴィルの『白鯨』を紹介しようと思います。