Eテレ 100分de名著『伊勢物語』第1回

「100分de名著」は長年毎週録画して見ているのですが、今月は特に興味をそそられる回がやって来ましたよ。『伊勢物語』

文学部にいた頃「国文学史」のレポート課題になっていたのと、そのスクーリングで、国文学の講義を受講したので、ワタクシ的に馴染みがある作品なんですよね。それがどのように紹介されるのか、ワクワクしながら第1回を見てみました。

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-第1回「みやび」を体現する男-

 

講師は高樹のぶ子さん。何故今回の講師なのかと言うと、『伊勢物語』を在原業平の一代記と捉えた小説を出版されたからだとか… 面白そうですね☆

ということで、番組では、作品紹介的から始まって、有名な「かきつばた」の歌などを紹介し、在原業平さんの魅力に焦点を当てていました。朗読は野村萬斎さんで、これまた素敵☆

-『伊勢物語』の成立-

ところがですね、ワタクシには冒頭から、???と首をひねらざるを得ない箇所がありました。…高樹のぶ子さんは、業平の一代記に仕立てられたんですね!?

まあ実は、大学のレポート課題が、まさに『伊勢物語』の成立についてだったので、その点についてはいろいろ調べました。でも、ずいぶん昔のことなので、久々にパソコンの中に入っていたレポートを出してきて読み返しましたよ。

そしたらやっぱり、「中世まではほぼ業平の一代記として享受されていた」と書いてありました。

そうなのです、高校の古文の授業では、「主人公は在原業平」として学ぶと思うのですが、大学の授業では、「在原業平が読んだ歌を盛り込んだ、架空の物語」だということから授業が始まり、国学が栄えた近世以降は、「一代記としては見ない」というのが普通なのです。

そもそも成立のきっかけは、『古今和歌集』にさかのぼります。『古今和歌集』に在原業平の歌は30首収められているのですが、どれも詞書(ことばがき)が長いのが特徴です。…詞書というのは、「〇〇が、△△の場面で読んだ歌」といった、和歌の前に書いてある説明文のことです。

『古今和歌集』の編者の一人で、「仮名序」という前書き的なものを書いている紀貫之は、「在原業平は、その心余りて、詞たらず」と評価しています。つまり、詞書(歌の説明)をきちんと書かないと、業平の歌が正しく理解されないと思ったようなのです。

…ちなみに、いわゆる六歌仙(和歌の名手)のことを一人ずつ書いているのですが、貫之はいちいちケチを付けていているので、かなり感じが悪い(笑)。

そして、その詞書の部分がどんどん長くなって、物語の形式を取ることになるのですが、それが発展していき、他の人が読んだ歌も入れて、主人公の話を盛り上げるようになります。例えば、在原業平のような人だったら、こんなことをするんじゃないか、またはこんなことをしてほしい的な。つまりは二次創作のノリ(笑)。だから素敵な男に仕上がっている☆

まとめると、『伊勢物語』は、在原業平よりもあとの時代の人が、業平の歌からインスピレーションを得て、「ある男」が主人公の物語に仕立て上げた作品、と言えます。…よって、写本の系統によって、収録されているエピソードが違ったりするんですね。

もちろん今では、作中の歌のうち、どれが業平作で、どれがそうでないかはわかっているので、大学の授業では、「この章段は業平とは関係ありません」と前置きがあってから、解説されたりします。

というわけで、そんなバラバラな作品をどう一つにつなげたのか、その点には結構興味津々☆ タイトルから見ても、『伊勢物語』の現代語訳というわけではなく、「小説」となっていますしね。

-『伊勢物語』の難しさ-

ワタクシは当然、全部の章段を読んだのですが…すみません、まずは現代語訳で(汗)、これが実に読みにくい(苦笑)。なぜなら、各章段がほぼ独立しているので、一段読むごとに「昔男~」と話がリセットされるわけですよ。そこでまた、この人どんな人?何があったの?という設定確認をしなければならないので、イチイチめんどくさい(汗)。

当時は、物語を一つのストーリーとして読むよりは、様々なエピソードを盛り込んで、オムニバス形式で楽しむ、というやり方をとっていたようなんですね。だから、同じエピソードでも、エンディングが違う、など、アレンジを楽しむのが醍醐味だったみたい。

よって、例えば「東下り」のエピソードでは、ずいぶん分量を割いて、東国に下る場面が描かれているのですが、ある章段ではいきなり京に戻ってきていたりして、「その間に何があったん!?」と展開に戸惑ったりすることもしばしば(汗)。

でも逆に、その行間の多さ、不完全さが、クリエーターの想像力をくすぐるわけで、面白いところでもあると思います。…古文の問題としては、難しいとも言えます(汗)。

もし読んでみたい!とおっしゃるなら、初心者コースとしては、ビギナーズクラシックシリーズをお薦めします。古典の有名な箇所を取り上げて、わかりやすく紹介してくれるシリーズで、ワタクシは結構いろいろとお世話になっています。

…いや、文学部がこんなの読んでちゃいけないでしょ、って感じですが(汗)、あくまでも導入としてはいいんじゃないでしょうか?もちろんその後に、全訳も読みましたよ。

 

-まとめ-

ということで、文学部の血が騒いであれこれ書いてしまいましたが(笑)、100分de名著ではこれからどういう話をしてくれるのか、楽しみです。

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