映画『天才作家の妻/40年目の真実(原題:The Wife)』(2017)

引きこもり生活になってから、寝てばっかりいますが(汗)… その話はまたいずれ、そのわりに見たいと思う映画になかなか出会えなくて、久々に映画を見た、というのがこの作品です。ノーベル文学賞を受賞した作家と、その妻のお話。

『天才作家の妻/40年目の真実(原題:The Wife)』(2017)
出演:グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレイター

―あらすじ―

ジョーのもとに、ついにノーベル文学賞を受賞したという知らせが届いた。事あるたびに、「妻がいなければ今の私はいなかった」と妻への感謝の言葉を述べるジョーに対し、やや複雑な表情を見せる妻ジョーン。そして、息子も連れてストックホルムで行われる授賞式へ向かう夫妻だが、ジョーの伝記を書きたいという記者のナサニエルが接近してきたこともあり、夫妻の隠された真実が明らかになる。

 

―夫婦の支え合い―

やはり、作家さんの産みの苦労というものは相当なものだ、と思わされるのがこの作品です。ジョーにとっては、妻の支えがなければ、作家として生きていけないわけですよ… 文字通り。←この辺りから、お察しください。

…ま、映画とかではよくあるパターンなので、それほど驚きませんが(笑)。

ですが、この作品では、その支え合いのバランスがかなり複雑です。夫は、妻の支えに対し十二分に感謝しているようなのですが、浮気癖はどうにもならない(汗)。一方の妻も、夫の作品を完成させるために努力を惜しまないのですが、夫だけが評価されるのが面白くはないらしく、鬱憤を抱えている、しかし、公の場で夫が妻を称賛すると、拗ねてしまう(汗)。

でも、さんざん言い合ったあとで、何やかんや仲直りをする …かなりめんどくさい(苦笑)。…夫婦には、夫婦にしかわからないことがあるんですよね(遠い目)。

 

―ジョーの作家としての素質―

息子のデイヴィッドとの関係もまた、こじれています。息子も作家なのですが、父の存在が偉大すぎて、グレています(苦笑)。その辺りから、ジョーの作家としての素質について考えてみましょう。

ジョーはもともと大学の教員で、ジョーンはその学生でした。だから批評をするのは上手なのでしょうね。デイヴィッドについても「発展途上な息子」と評価します… 日本人的な感覚だと、身内のことを謙遜するのが普通だから何とも思いませんが(笑)、デイヴィッドはそのことで傷つきます。

ワタクシが思うに、ジョーは、教員には向いているけど、作家には向いていないのではないかな?作品中二度ほど出てきた、ジョーがジェームズ・ジョイスの詩の一節を読み上げるシーンを見て、教員とは、カリキュラムに沿った内容を伝える仕事であって、オリジナリティーが必要な仕事ではない、という印象を受けました。

大学のレポートとかもそうですよね。先行文献を研究して、きちんと理解できていることを示す、といい評価を得られるわけで、主観を入れてしまったら、それで終わり、なわけです。

でもだったら、自分の作品くらい、きちんと評価できればいいのに、と思うのに、その点は妻任せ(汗)。公の場で、文学的な表現でスピーチをすることができるのは評価できますが、浮気したり、声を荒げて話したり、人間として尊敬できない点が多いのは痛いですね(汗)。

 

―不思議な距離感―

じゃあ、妻の方はどうかということですが、妻もまた自立するまでには至らない点が弱いですね… ジョーのことを愛してしまっている。だったら、「妻」という立場に徹することに決めたらいいのに、やっぱり自分も評価してほしいと思っている… その辺りが中途半端。また、授賞式後の晩餐会での態度はいただけない… あまりに大人気なさすぎる。

だから、この映画を見ていて不思議なところは、誰にも共感できないという点なんですよね。作品の中にも、「登場人物に共感できない」とやはりいい作品にはならないというくだりがあって、ワタクシ自身も、小説や映画を見るときには、大概登場人物の誰かの視点で読む(見る)ようにするのですが、この作品は常に客観的な視点から見ていました。

ただ、面白いのは、夫婦が喧嘩を始めても、必ず何かのきっかけで休戦状態になるので、こちらの置いてけぼりにしないという点です。…これは、意図的に仕組んでいるのだと思います。

ワタクシも、そこそこ長く生きているので分かるようになってきましたが(笑)、世の中、何だかんだでうまくいくようになってるものですよね~。この夫婦が揉めても、何かしらの力… 「神の見えざる手」的な力が働いて、二人の仲を取り持つようにしてくれているように感じられます。…「夫婦喧嘩は犬も食わない」という諺がありますが、喧嘩が始まって画面から目を背けたくなっても、いいタイミングでちゃんと仲直りするので、飽きずに見ていられる(笑)。

…こんな距離感の話、以前、フランス文学のレポートのときに書いたことあるわ(笑)。

そう考えると、ラストシーンは、妻のこれまでの献身を、「神」が認めてくれたのではないかと思わざるを得ません。だから、穏やかなエンディングを迎えられます。

 

―まとめ―

ということで評価は☆☆☆☆彡4つ半!

うまくできている作品です。また、かなりめんどくさい人が多く登場しますが、裏を返せば、人間味がうまく表されているという意味になりますしね、これこそが人生、と。

また、ノーベル賞の舞台裏、的なものが見られるのも興味深いです。リハーサル風景とか、滞在中の様子とか、普通じゃ見れませんからね!面白かったです☆

いずれにせよ、作家には産みの苦しみがつきもの、と。それは小説などに限らず、映画でも、音楽でも、絵画でもそうかも知れませんね。ということで、芸術作品に触れるときには、敬意を評して、できるだけ感想を書いていこうと思います☆

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